「Claudeが本人確認を始めるらしいですよ。顔写真と身分証が要るって……大丈夫なんですか?」——先日、ご相談の場でこんな声をいただきました。結論から言うと、慌てる必要はありません。むしろこれは、これからAIとどう付き合うかを考える、いいきっかけになります。
1. 「全員が今すぐ顔出し必須」ではありません
まず、事実を正確に整理させてください。ここがいちばん大事です。
ニュースやSNSでは「Claudeが顔写真と身分証を全員に必須化する」といった、少し過熱した伝わり方をしています。でも、Claudeを作っているAnthropicの公式説明を読むと、実際はこうです。
「特定の場面で、本人確認を求めることがある」——不正利用が疑われる場合や、一部の機能を使うとき、安全性の確認が必要なときに「お願いすることがある」という内容です。全員が今すぐ、ログインのたびに顔写真を出す、という話ではありません。
集めるのは身分証とその場の自撮りで、データは外部の専門会社が預かり、AIの学習には使わないと明言されています。対象は主に個人向けのプランで、法人向けのプランは対象外です。
「怖い」と感じたその気持ちは、自然なものです。でも、煽りの言葉ではなく一次情報で確かめると、景色はだいぶ変わります。この「自分で一次情報を確かめる」という姿勢こそ、これからAIと付き合ううえでいちばん効いてきます。
2. なぜ今、「備え」を考えておくといいのか
今回の件で本当にお伝えしたいのは、本人確認そのものよりも、その奥にある事実です。それは——AIのサービスは、規約も料金もルールも、ある日突然変わるということです。
実際、ここ数ヶ月だけでも「料金プランの変更」「無料だった機能の有料化」「使えていたモデルの停止」が次々と起きています。今回の本人確認も、その流れの一つです。
これは悪いことではありません。サービスが進化している証拠でもあります。ただ、便利さを長く安心して使い続けるなら、「変化が起きる前提」で備えておく。これが賢いやり方です。
天気と同じです。晴れの日も雨の日もあると分かっていれば、傘を持つかどうか自分で決められます。慌てるのは、晴れがずっと続くと思い込んでいたときだけです。
3. これから持っておきたい、3つの備え
①どのAIに、何を任せているかを書き出しておく
意外と、自分が「どのサービスを、どのプランで、何のために使っているか」は曖昧になりがちです。これを1枚に書き出すだけで、規約変更のニュースが来たときに「これは自分に関係あるな/ないな」がすぐ判断できます。
私の例 → 私は、仕事で使っているAIサービスを名前・プラン・用途の3列でメモにしています。今回のニュースを見たときも、「個人プランが対象か」をその場で確認できて、慌てずに済みました。
②大事な成果物とルールは、手元にも残しておく
AIの中だけに大事なものを置きっぱなしにすると、サービスが止まったり仕様が変わったときに困ります。作った資料や、AIに守らせている自分の「やり方のルール」は、自分のパソコンのフォルダにも控えを残しておきましょう。
私の例 → よく使う指示や手順は、AIの中だけでなく自分のフォルダにも保存しています。これなら、使うAIを乗り換えても同じルールをすぐ渡せます。「1社に預けきらない」が、地味に効く備えです。
③料金・本人確認・規約の変更は「期限もの」として先に確認する
変更には、たいてい「いつから」という期限があります。今回の本人確認も発効日が告知されています。こうした期限ものは、来てから慌てるのではなく、気づいた日のうちに「自分は対象か」「いつまでに何をすればいいか」を確認しておく。これがいちばんラクです。
私の例 → AI関連で「○月○日から変わります」という案内を見たら、その場で自分への影響だけ確認して、メモに一行残します。あとで探し回らずに済みます。
4. この3つから、私自身が意識していること
3つの備えに共通するのは、「特定の1社に、すべてを預けきらない」という姿勢です。
どれか一つのAIサービスがどんなに便利でも、規約も料金も相手の都合で変わります。だからこそ、大事な情報とルールは手元にも持ち、いざとなれば別の選択肢も取れる状態にしておく。これだけで、変化が起きても「困った」ではなく「じゃあこうしよう」と動けます。
そしてもう一つ。私たちのように、お客さまにAIをおすすめする立場なら、「このサービスは、データをどう扱うのか」を自分の言葉で説明できるようにしておく。安心して使ってもらうための、最低限の備えです。
5. たとえるなら、「賃貸のお部屋」
AIサービスとの付き合いは、賃貸のお部屋に似ています。
設備が整っていて快適だけれど、その部屋のルールを決めるのは大家さん(サービスの提供元)です。家賃が変わることもあれば、「鍵を新しくします」と言われることもある。本人確認の導入も、この「大家さんのルール変更」の一つです。
賃貸で暮らす人が、本当に大切な物は自分で管理しておくように——AIも、便利に使いながら、大事なものの控えは自分の手元に。そう考えれば、ルールが変わっても落ち着いていられます。
6. まず一歩 ── 使っているAIサービスを「1枚」に書き出す
今日できる一歩は、自分や会社で使っているAIサービスを、名前・プラン・用途の3つで1枚に書き出してみることです。5分もあれば、最初の1枚ができます。
完璧でなくて大丈夫です。書き出してみると、「これは個人プランだから今回の話に関係しそうだ」「これは仕事で重要だから、控えを残しておこう」と、自分の頭で判断できるようになります。
なお、「そもそもAIに会社の情報を入れていいの?」という"情報の入れ方"の線引きは、別の記事で詳しくお話ししています。あわせて読むと、安心して使える範囲がぐっと広がります。
ニュースに振り回されるのではなく、自分の備えを一つずつ整えていく。それが、これからAIと長く付き合うための、いちばん確かな"セキュリティ"です。最初の一歩を一緒に整えたいときは、私たちもお手伝いします。
※本記事の内容は2026年6月22日時点の情報です。本人確認の仕様・対象・開始時期は今後の発表で変わる可能性があります。実際にご判断される際は、Anthropic(Claude)の公式ヘルプページもあわせてご確認ください。