「これから、AIで自分の仕事はどうなっていくんでしょうか」——先日、ご相談の場で、個人事業主の方からこんな声をいただきました。結論から言うと、慌てる話ではないと思っています。
私自身も、いろいろ調べたうえで出した答えはこうです。「AIで仕事がなくなる、は半分だけ本当」。なくなる作業はある。でも、新しく増える仕事もある。大事なのは、その変化に向けた「備え」を少しずつ始めておくことだと思うようになりました。
この記事では、エンジニアでない個人事業主・働く人が、これからのAI時代に向けてやっておきたい「備え」を、3つに絞ってお話しします。
1. 「なくなる」と「増える」は同時に起きる。だからこそ「備え」
数字を見ると、変化が本物なのはたしかです。世界経済フォーラム(WEF)の「Future of Jobs Report 2025」によると、2030年までに世界で約9,200万人分の仕事が失われる一方、約1億7,000万人分の新しい仕事が生まれると予測されています。差し引きすると、約7,800万人分の純増です。企業の86%が「AIで業務が変わる」と答え、仕事に必要なスキルの39%が2030年までに変わるとも言われています。
※WEF=世界経済フォーラム。世界の経済や雇用のデータをまとめている国際的な団体です。
つまり、なくなる仕事と増える仕事が同時に起きる、ということ。怖がる話というより、「波が来ているから、少しだけ準備しておこう」という話だと私は受け止めています。
総務省「令和7年版 情報通信白書」を見ても、日本で生成AIを個人で使っている人はまだ26.7%。アメリカの68.8%、中国の81.2%と比べると出遅れていますが、これは裏返せば、今から始めても十分に間に合う「伸びしろ」だと思うんです。今やっておく「備え」が、あとで大きな差になります。
2. 押さえておきたい「備え」は3つだけ
備えと言っても、難しいことをする必要はありません。私が実際にやってみて「これは効くな」と思った3つを紹介します。
① まずは「使う側」にまわる(とにかく触る)
いちばんの近道は、評論せずに自分で触ってみることです。総務省のデータでも、20代の利用率は44.7%。世代で差はあるけれど、特別なスキルがある人だけが使えるものではありません。
私の例 → 最初はメール返信の下書きを頼むところから始めました。「丁寧な言葉に直して」とお願いするだけ。それだけでも、AIが何が得意で何が苦手かが、肌でわかってきました。とにかく一度、自分の仕事で使ってみる。ここがスタートだと思います。
② 自分の仕事を「作業」に分けて、任せられる所だけ渡す
仕事まるごとを渡すのではなく、細かい作業に分けて考えるのがコツです。経済協力開発機構(OECD)の研究でも、AIに影響を受ける仕事でも、多くの人に専門的なAIスキルが必要なわけではなく、変わるのは「やる作業の中身」だと指摘されています。
※OECD=経済協力開発機構。世界の経済や働き方を研究している国際機関です。
私の例 → 自分の1日を「下書きを書く」「日程を調整する」「お客さんと話す」と作業に分けてみました。すると、下書きはAIに任せて、お客さんと話す時間を増やせる、と見えてきます。全部任せようとしないのがポイントです。
③ 人にしかできない部分(判断・信頼・人柄)に時間を寄せる
AIに作業を渡せたぶん、空いた時間を「人にしかできないこと」に使います。実はこれが、データとも合っています。AIの開発元であるAnthropic(アンソロピック)の調査「Economic Index」によると、個人のAIの使い方は「丸ごと自動化」が45%なのに対し、「相談相手・補助として使う」が52%。AIは奪うより手伝う、という使われ方のほうが多いんです。
私の例 → 見積書の下書きはAIに任せ、最後に「このお客さんにはこの提案が合うかな」と考える時間にあてています。判断や信頼づくりは、やっぱり人の仕事です。
3. だから、私が日々意識していること
正直に言うと、私もAIを完璧に使いこなせているわけではありません。うまくいかない日もあります。
それでも意識しているのは、「全部を一度にやろうとしない」ことです。新しい機能が出るたびに焦るのではなく、自分の仕事のひとつだけ、AIに渡してみる。それで時間が空いたら、お客さんとの会話や、自分にしかできない判断に使う。この繰り返しです。
不思議なもので、少しずつ触っているうちに、最初に感じた「怖さ」は「これは味方かも」という感覚に変わってきました。備えるというのは、身構えることではなく、ちょっとずつ慣れていくことなんだと思います。
4. たとえるなら、AIは「超優秀だけど指示待ちの新人」
私の中でしっくりきているたとえがあります。AIは、めちゃくちゃ優秀だけど、指示を待っている新人のようなものだ、ということです。
放っておいても勝手には動きません。でも、こちらが「これをこうして」と頼めば、驚くスピードで形にしてくれます。新人に仕事を教えるのと同じで、最初は手間でも、任せ方がわかってくると、どんどん頼れるようになる。逆に言えば、頼み方を知っている人ほど、これからの時代は得をするのだと思います。
5. まず一歩 ── 明日の仕事で「いつもの作業ひとつ」だけAIに頼んでみる
ここまで読んで「結局、何から始めれば」と思った方へ。おすすめは、明日の仕事の中で、いつもやっている作業をひとつだけAIに頼んでみることです。メールの下書きでも、文章の要約でも構いません。たった一度の「やってみた」が、いちばんの備えになります。
AIの波は、怖がる対象でも、急いで身構える対象でもないと私は思います。少しずつ触って、慣れて、自分の仕事に合う使い方を見つけていく。その小さな積み重ねが、これからのいちばんの「備え」になるはずです。
もし「どこから始めればいいか分からない」と感じたら、私たちもお手伝いします。最初の一歩を一緒に考えるところから、お気軽にご相談ください。
※本記事の内容は2026年6月時点の情報です。AIサービスの仕様や統計の数値は今後変わる可能性があります。実際にご判断される際は、各公式情報もあわせてご確認ください。